誘電体バリア放電を用いた青果物鮮度保持

 誘電体バリア放電によって生成された活性種を用いて,空気中のエチレンの分解や浮遊菌の殺菌を行っています。

 青果物の輸送・保管においては,品質を低下させる要因として,植物ホルモンの一種であるエチレンガスや,青果物表面に存在する微生物による腐敗が挙げられます。従来のエチレンガスの処理方式として光触媒を用いて酸化分解を行うものがありますが,反応速度が遅いため青果物の貯蔵量を制限してしまいます。また,先進国において,収穫された青果物の20 ~ 25%が,ポストハーベスト処理中に腐敗していると推定されています。特に,発展途上国では保管や輸送施設が不十分なため,腐敗による損失がより深刻となります。青カビなどの真菌は,その菌糸や胞子が空気中に浮遊することによって,広い範囲に微生物被害を拡大させます。青果物を防除するため合成洗剤が使用されていますが,世界的な傾向として殺菌剤の使用を減らすことが求められ,より安全で環境に優しい代替法の開発が求められています。

 誘電体バリア放電は放電電極間に誘電体を介在させた状態で,交流電圧やパルス電圧を印加させることにより発生させる放電です。誘電体の存在によって放電が短時間で終了されるため,中性ガスやイオンの温度を上げません。放電により生じる高エネルギーの電子が空気中の酸素分子と衝突して酸素ラジカルやオゾンといった活性種を生成します。これらの活性種がもつ強い酸化力を利用して,エチレンや浮遊菌の酸化分解を行います。

 エチレン除去実験により,高効率,高速でエチレンが酸化分解されることがわかりました。エチレン分解装置に触媒を併用することにより,放電により生じる副生成物の発生を抑えることができます。実際のコンテナ内で使用できる試験機も多く試作しています。

 また、浮遊菌の殺菌実験により,誘電体バリア放電の放電空間を通過する浮遊菌 (アオカビの胞子) は,放電空間に生じる高電界によって帯電され,クーロン力によってリアクタ上に捕集されることがわかりました。現在,捕集された浮遊菌への殺菌効果を検討しております。

エチレン分解装置試作機

誘電体バリア放電の様子

エチレン分解装置搭載コンテナ

放電処理有無によるカビの様子