交流電界を用いた生鮮食品の鮮度保持

 本テーマでは,これまで,食材を交流電界下で凍結させ,食品の劣化を抑制するための研究を行ってきました。冷凍保存は他の保存方法と比べ,保存期間を飛躍的に延長できることから,一般的に使用される保存方法です。しかし,冷凍保存では,食材を解凍する際に,細胞や旨味成分がドリップとして漏出することで,品質が劣化するという問題があります。そのため,品質を損なわない鮮度保持技術の開発が必要となっています。そこで,食材に交流電界をかけながら凍結する技術が注目されています。これにより,食品のドリップを抑制することがこれまでにわかっています。また,本テーマではこれまでに交流電界下でのチルド保存に関する研究を行ってきました。ホタテのチルド保存では,電界下で保存したホタテの鮮度の目安となるK値が減少し,ドリップも減少する傾向にあることがわかっていますが,まだ実用的な値までの減少には至っていません。また,ウニを電界下で冷蔵保存したところ,細胞膜の膜タンパクに電界が影響し,タンパク質の漏出が抑制されることが見られました。また,鶏モモ肉のチルド保存でも同様にドリップ漏出率が減少する傾向にあることがわかっています。モデルタンパク質であるウシ血清アルブミン(BSA)に交流電界を印加したところタンパク質の構造変化を引き起こしている可能性がみられましたが,より詳細な検証が必要になっています。

ホタテの電界下での冷蔵保管

ウニのサンプル(遠心分離)