放電プラズマを用いた水耕栽培培養液の処理

 高電圧パルスパワーを用いて水中で放電プラズマを発生し、水耕栽培へ応用する研究をおこなっています。

 近年農業において、栽培に要する労力が少ないことや天候に左右されず安定して多くの収量が得られることから養液栽培が注目されています。養液栽培は、植物に吸収されなかった培養液を回収して養液成分を調整し再度供給する循環方式と、余剰養液をそのまま廃棄するかけ流し方式の2種類の方法があります。かけ流し方式は排液中に含まれる窒素やリンなどが河川や土壌へ流出することによる環境への負荷や養液の利用効率が低いことが懸念され、循環方式への転換が進められています。しかし循環方式では養液を循環させているため、植物の根から排出される分泌物に含まれる有機物が培養液中に蓄積されることによる植物の生育阻害や、病害菌が侵入した場合の被害が拡大しやすいといった問題があります。そのため、有機物の分解や殺菌処理などにより培養液の環境を保持することが必要不可欠となっています。

 水中放電によってヒドロキシラジカル(・OH)やオゾン(O3)のような強い酸化力をもつ化学的活性種や、衝撃波、高電界、UV光などを生成し、これにより殺菌やアレロパシー物質の分解がおこなわれます。また、気相内で・OHのような活性種が発生し、液相表面で反応することにより硝酸態窒素、亜硝酸態窒素が水中に溶け込みます。硝酸態窒素は,一般に植物の栄養分として根から吸収されるため、植物の生育を促進すると考えられています。

 本研究グループの先行研究では、水中気泡内放電処理を行った水がコマツナの生育を促進することが報告されています。また、本研究グループが開発した循環型処理システムは一般生菌数評価では1日に960 L殺菌処理可能で、青枯病菌数評価では1日に1360 L殺菌処理可能であることが示唆されました。また、キュウリのアレロパシー物質である2,4-ジクロロ安息香酸水溶液に対して24時間放電処理を施し、80 %以上分解できることがわかりました。

放電プラズマの様子

水耕栽培培養液実証試験装置

培養液中青枯病菌殺菌による感染率抑制
左:ネガコン(菌無し・無処理)
中央:ポジコン(菌有り・無処理)
右:菌有り・放電処理