本研究では高電圧パルスパワーによって生成される活性種を用いて, 土壌中の病害菌を殺菌する技術の研究をしています。
農業では連作障害によって収穫量が低下する問題が発生しており, その一つとして挙げられるのが土壌病害菌による影響です。今までは臭化メチル等の薬剤による消毒が一般的でしたが, 人体や環境に影響を与えるというデメリットがあるため, 現在は使用が禁止されています。代替技術として太陽光や熱水を用いた物理的消毒が用いられていますが, 天候に左右される, コストがかかるという問題があります。そこで, 私たちはパルスパワー技術に注目しました。
パルスパワーによって生成されたオゾンやヒドロキシラジカルといった活性種は, 細菌の不活性化に寄与します。また, 反応が早く, 他の物質に代わるので, 人体や環境への影響がありません。私たちの研究では, 実験室内で行えるように小規模な模擬土壌を作製し, そこに高電圧パルスによって直接放電を行って, 土壌病害菌(フザリウムなど)の実験をしています。また, 細菌と同様に活性種の作用によって分解する青い染料(インジゴカルミン)や, 土粒子を模したガラスビーズを用いて実験をしています。それぞれ菌数の変化と染料の色の変化をみて, 放電の効果があるかみています。
現在, 放電処理によってこのような菌数の減少, 染料の脱色が確認されています。このことから土壌への放電処理が有効であることがわかります。他にも電気的特性(電圧, 電流)や, 土壌特性(水分, 密度, 深さ)などを変化させて, 処理効果が高い条件について検討しています。最終的に, 農家の方々でも安全で楽に殺菌処理ができる装置を作ることを目標にしています。
土壌上でのコロナ放電
土壌中の菌の殺菌
模擬土壌中へのラジカルの侵入